「遠く、近く　掛井五郎のこと」著：佐伯誠

ワッツでも展覧会をさせて頂いてきた彫刻家、掛井五郎氏。2021年91歳で逝去する最期の時まで生涯現役を貫いたと言える芸術家です。
掛井氏と懇意にしていた文筆家の佐伯誠氏が書いた「遠く、近く　掛井五郎のこと」。
厳しい目を持ち、深い愛を携え、自分を誤魔化さずに生きた、その強さとチャーミングさなどさまざまな側面のエッセイとところどころに挟まれた版画から、掛井氏の魅力に引き込まれます。

出版は、「大切に持っていたくなる１冊を届ける」という思いで本を制作するリトルギフトブックス。こだわった紙質と袋とじの柔らかな手触りもまた幸せな気持ちにさせてくれます。
自分だけでなく人にも贈りたくなる本です。

以下：出版社の説明より
著者: 佐伯 誠 / 出版社: リトルギフトブックス / 130mm×182mm / P80 / ソフトカバー

静岡に生まれ、日本各地にパブリックアートをのこした彫刻家、掛井五郎。銀座の画廊主は「ピカソが嫉妬するだろう」と言い、染色家・柚木沙弥郎さんは「掛井さんはぼくの先生です」と慕います。　

初期のブロンズは重厚で力動にあふれたものでしたが、それに満足することなく、フォルムは歪んだり膨らんだり縮んだりして奔放な変容をつづけました。2021年秋、91歳で他界するまで創造力はとどまるところを知らず、小淵沢の収蔵庫には彫刻、ドローイング、ガラス、版画、オブジェなど、ジャンルを超えて2万点を超える厖大な作品がのこされています。

「会っているとき、もうこんな人には会えないんだぞ、そんな胸苦しさを覚えたことがあるだろうか?　いきなり現れたのが掛井五郎だった。内に火焔獣を抱えた人で、そばにいるとたえず熱気がたちこめているのを感じた。それが動きを止めたとはとうてい信じられない。すべてがかき消されないうちに、覚えていることの欠片をひろいあつめておこうと思った」（佐伯誠／文筆家）。

あまりに変貌がめまぐるしいために、これまで論じられることの少なかった彫刻家の、知られざるチャーミングな素顔、謹厳さににじむユーモア、逸話のかずかず。版画10点の挿画とともにお届けします。